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2016/5/13

「初雪をかく」酒井医療が生み出すまったく新しいポータブルトイレ

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Interview



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今回は、新宿区にある酒井医療株式会社さんにお邪魔し、ポータブルトイレ「rooma」について、開発の経緯や想いを担当の浦野さんにお聞きしました。



介護が施設から在宅へと変わるなかで


【深澤】酒井医療さんといえば、まず介護浴槽やリハビリ機器が思い浮かびますよね。

【浦野】はい、そうですね。弊社は1881年に創業し、医療・介護福祉分野に向けてリハビリテー ション機器や介護浴槽、福祉機器などの研究・開発、そして製造から販売まで行っております。

【深澤】なんと、100年以上も続く長寿企業だったんですね!すごいですね。

【浦野】はい(笑)。その他にも、デイサービスやサービス付き高齢者向け住宅などの運営も行っていますよ。

【深澤】そうなんですね、それは意外でした。それで今回は、ポータブルトイレ「rooma」について、お聞きしたいのですが、どのような経緯で「rooma」が生まれたのですか?個人的に、とても興味があります。デザイン性が高いポータブルトイレが、ついに出てきたなという感じです。

【浦野】今後さらに、在宅介護への流れが推測され、在宅介護向け市場もますます重要視されるなか、弊社でも、リハビリのマシーンや介護浴槽だけではなく、在宅向けの製品も開発していこうとなりました。そこで、まずポータブルトイレを作ってみようという話が出ました。

【深澤】なぜポータブルトイレだったのですか?

【浦野】市場に出回っているポータブルトイレに2つの問題を感じていたからです。

【深澤】2つの問題とは?



ポータブルトイレは本人が欲しくて買うものではない


【浦野】まず一つに、見た目、デザインです。今出回っているポータブルトイレは、プラスチックか木目調のものが多数を占めています。もちろん、移乗や掃除のしやすさなど配慮して合理的に作られてはいますが、でも、それって使用する本人が、本当に納得しているものなのでしょうか。ポータブルトイレって本人がどうしても欲しくて買うものではないですよね。

【深澤】できれば隠しておきたいことですよね。人に見られたくないものです。

【浦野】「このポータブルトイレが部屋に欲しいな」「これを部屋で使いたい」という人は、ほぼゼロですよね。ADLの低下に伴って致しかたなく使うようになります。なのに、ほとんどのポータブルトイレが、トイレそのままのデザインで、使用する本人の自尊心に配慮されていないのが現状だと思います。

【深澤】うんうん。たしかに。

【浦野】いまどき、みなさんがお部屋に何を置かれるとしても、インテリア性を重視するのが普通だと思います。そこで、本人の自尊心を傷つけないようにするためには、ポータブルトイレがトイレには見えない、お部屋に合うように再設計する必要があるんじゃないかと考えました。そして、デザイン性を追求した結果、現在のソファ調に行き着きました。



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【深澤】素敵なデザインだと思います。シンプルなのに、一見してトイレだとは思いません。

【浦野】これなら、お孫さんやお客さんが部屋に来たとしても、どこか別の部屋に隠したり、見えないようにカバーを掛ける必要もありません。ちょっと隅に避けておけば、トイレだなんて思いません。

【深澤】調和していますよね。それでは、もう一つの問題とは?



ワンタッチで自動処理!


【浦野】もう一つの問題ですが、現在のポータブルトイレにおける排泄物の処理って、その多くが依然としてバケツ型です。バケツ型以外にも、バイオや水洗式など色々出てはいますが、それらは設置工事が大掛かりで、とても「ポータブル」とは言えません。バケツということは、汲取り式便所と同じものが、部屋にそのまま置いてあるということです。これって、介護する側にも介護される側にも、すごく精神的ストレスになっているのではないでしょうか。

【深澤】そうですね。すぐにバケツのなかの排泄物を片付けたとしても、臭いが残ってしまいます。夜間だったら、すぐに片づけてあげることもできないだろうし、繰り返し使っていれば臭いも染みつきます。毎回洗うのも大変ですし。では、「rooma」はどのように排泄物を処理するのですか?



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【浦野】「rooma」は、フィルム式です。フィルム内に排泄をした後、熱溶着で完全密封します。しかも、前面にあるスイッチをひと押しするだけだから、本人でも簡単にできます。新しいフィルムは、自動で送り出されるので手間もかかりません。

【深澤】それは便利ですね!密封されたフィルムはどうなるのですか?



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【浦野】おおよそ2分後、自動的で切り落とされ、座面下のトレーにシーリングされた状態で排出されます。

【深澤】おおお!あとはそれを捨てるだけですね。簡単ですね。

【浦野】はい、簡単なのももちろんですが、あらかじめ入れる凝固剤によって、排泄物はゲル状に固まるので、部屋に臭いが拡散しにくく感染症の拡大防止にもなり、とても衛生的なんです。2014年に受賞した、グッドデザイン賞でも、デザインと排泄物処理の自動化の点を評価していただきました。

【深澤】凝固剤ですか。



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【浦野】そうです。凝固剤を入れることで、尿の臭いの原因となるアンモニア分解を遅らせることができます。これで、嫌な臭いを格段に抑えることができます。それに凝固剤は入れっぱなしでも大丈夫です。

【深澤】なるほど。でも、頻尿の方はフィルムも凝固剤も多く使用することになりそうですね。

【浦野】いや、大丈夫ですよ。毎回、少しの排尿で密封して捨ててしまうのはもったいないですよね。ですから、その場合であれば、凝固剤を少し多めに2~3プッシュ入れておき、ある程度、尿がたまったら密封して捨てれば大丈夫です。高齢者の平均排尿が、100~150CCと言われているので、通常はワンプッシュ分(2g)で十分に固めることができます。ボトル1本に、凝固剤が400g入っているので、ワンプッシュずつ使用したとして約200回分ですね。

【深澤】湿気が多い環境でも固まりますか?

【浦野】夏場のとても湿気の多いところで使用する場合に、水分を含んでしまって固まりにくいことも考えられます。ただ、よっぽどの時間放置していない限りは、吸水性が高いので、心配するほどでもないです。



家族のための介護でもいつかは負担になる


【深澤】これなら毎日やらないといけないトイレの後片づけの負担もかなり軽減できますね。

【浦野】そうです、在宅介護は毎日のことなんです。介護に定休日というのはありません。ですから、はじめは家族のためだと介護をがんばっていても、なかなか気持ちが長く続きません。家族だからこそ余計にキツい部分もあります。そのストレスが本人に向いてしまうことだってあるかもしれません。介護を仕事としている介護職の方たちですら、気持ちのコントロールが難しいときもあります。ですから、そういった介護負担という問題を解決していかないといけない。

【深澤】介護の負担は、家族に大きくのしかかってきます。

【浦野】これから介護の現場が在宅に移行していくなかで、オムツを交換したり、バケツにある排泄物を捨てたり、洗ったり。家族の生活のなかに介護が入ってきます。だからこそ、この排泄処理の負担が少ない「rooma」を、まずは広めていきたいと私たちは考えます。



新しい道を切り開く精神で


【深澤】デザインに高級感もあって良いですし、排泄物の自動処理も便利で素晴らしいですね。 ただ、ここまで良い製品だと気になるのは価格ですかね。そのあたりについては、どのようにお思いですか?

【浦野】そうですね、作ってみたら結果的に高級になっちゃったというのが正直なところなんです。「ソファに見えるポータブルトイレを作ろう」「それに見合った材質を選ぼう」と追及していたら(笑)

【深澤】そうなんですか(笑)

【浦野】こういう商品を紹介すると、「いろいろなものが出てきてますね」と喜んでおっしゃってくれる方もいれば、「何を作っちゃったの、そのニーズはないでしょ」と言われてしまうこともあります。

でも、この「rooma」に限って言うと、基本的に介護をする側の目線では作っていないんです。実際に使用するお客さんの目線で作った商品なんです。だから、ポータブルトイレとわかるような実用的な部品はつけません。つけると元のポータブルトイレになってしまうからです。すべてのポータブルトイレが実用的である必要がなく、こういった高級感のある商品が一つあってもいいのではと私たちは考えます。

【深澤】本人が自由に選べるという選択肢があることが重要ですよね。この商品が欲しいお客さんは必ずいます。「rooma」は、酒井医療さんにとって新しい挑戦なんですね。



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【浦野】まさしく、そうですね。弊社の社訓として「初雪をかく」という言葉があります。それは、降り積もった雪をかき分け、道なき道を切り開いていこう。新しい医療のために、後に続く人たちのために、自ら汗をかいて働こう。この理念のもと、私たちは、どんどんと新しい製品を作り上げていこうという精神を大切にしています。これに限らず、在宅で家族がより楽に介護ができ、本人が満足できる製品をこれからも作っていきたいですね。

【深澤】今後も期待しています!ありがとうございました。





商品スペック
■商品名:ポータブルトイレ ルーマ
■メーカー:酒井医療株式会社
■販売価格:324000円(税込) ※送料別途
■サイズ:560(W)×625(D)×625~775(H)㎜
■ひじ掛け高さ:200㎜
■便座高さ:325~475㎜(6段階)
■質量:25.5㎏
■電源単相:100V(50/60Hz)
■電力:113W(50/60Hz)
■電源入力:125VA(50/60Hz)
■使用可能体重:100㎏以下
■付属品:交換用フィルム1個、凝固剤 Gel Max ボトルタイプ1本、トレー1個、ACアダプター1個
■材質:本体/ポリプロピレン、背もたれクッション・座面・ひじ掛け・便座/ポリウレタン



酒井医療株式会社:http://www.sakaimed.co.jp/


作成者:深澤 裕之