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2018/2/27

排泄センサー「Helppad」を開発する株式会社abaに行ってきた!

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「誰もが介護できる世界を実現する」をミッションに掲げ、介護分野に向けてロボットの研究開発などを行っている株式会社aba。今春にも販売を予定している排泄センサー「Helppad」について、代表の宇井さんにお話を伺いました。

排泄センサー「Helppad」とは




Helppadは、においで尿と便を検知する排泄センサーで、介護におけるオムツ交換を便利にしてくれる製品です。

においセンサーが内蔵されているシートをベッドに敷くことで排泄物を検知し、オムツ交換のタイミングを通知してくれます。オムツ交換が遅れることによる不快感、尿や便の漏れを防ぐことができます。

また、オムツや⾐服を着⽤したままでも排泄を検知することができるので、要介護者と介護者の双方に精神的ストレスや体⼒的な負担をかけません。

これまでのオムツ交換では、排泄されているかはオムツを開けて中を確認するまでわかりませんでした。そのような“空振り”をなくすことで、介護者の時間的コストの削減も実現できます。

開発のきっかけ


[深澤]宇井さんがヘルスケア分野に興味を持たれたのは、ご家族の病気がきっかけだったのですね。

[宇井]はい、まだ私が中学生だった頃です。ある時から祖母がうつ病になってしまいました。しかし、病気や介護のことがあまりよくわからない私たち家族にとって、精神的に病を抱えている祖母と暮らしていくことはとても大変でした。

当時、祖母から愚痴を毎日聞かされ、とても苦しかったことを憶えています。その時の経験から、「介護をする側を支えなければいけない」という気持ちを抱くようになりました。

[深澤]そのような苦しい経験があったのですね。それでは、Helppadの開発のきっかけとなった出来事は?

[宇井]中学校高校と、当時からテクノロジーに興味があった私は、介護する人を技術で支える研究ができる、千葉工業大学の工学部に進学しました。

配属先の研究室では、介護の現場で何が求められているのかを調査するため、誰もが介護施設に実習に行きます。

このときに現場で働く介護職の方から、「オムツを開けずに中が見たい」という声を聞いたことが、Helppadを開発するきっかけになりました。

[深澤]実習先の介護施設だったのですね。

[宇井]はい。このときに、オムツ交換が空振りに終わることや交換のタイミングがずれてしまうことなどは、忙しい日々の介護職の方にとって、とても負担が大きいことなんだと知りました。

[深澤]そこで得たものは大きかったのですね。

[宇井]そうですね、現場と寄り添いながら開発することが大切だという認識は大学時代からもっていました。ただ私自身、ユーザーのことがまだまったくわかっていないと思っていました。

ですから、大学を卒業し起業してからも開発と研究を進め、介護施設で週3-4日、夜勤も含めて3カ月間ボランティアとして介護施設に足を運び続けました。

しかし、その経験から感じたことは、「介護のことがわかってないにもほどがあるな…」ということ。そこで再び、介護に必要な知識や技術を得るために、介護職員初任者研修を取得し、小規模多機能の介護施設で土日だけ、2年余り働かせていただきました。

[深澤]開発のために腰を据えてじっくりと介護に取り組んでいらっしゃったのですね。会社設立後の経営はスムーズに進められたのでしょうか?

[宇井]開発を進めていくうえでの人材は、研究室の先輩や友人に手伝ってもらったり、OBから紹介をいただきました。資金面ではベンチャーキャピタルからの投資や株式の発行で資金調達を行っています。

また2012年に、私が日経ビジネスに掲載された際、その記事を見てくれたパラマウントベッドさんからお声がかかり、パートナーとして共同開発をすることになりました。その後は地道な開発を担当者と一緒に5年ぐらい続けてきました。

Helppadの構成


[深澤]それでは製品についてもっと詳しくお聞きしたいです。「Helppad」の構成はどのようになっていますか?

[宇井]まず吸引シート部には、においを吸引するためのチューブとポンプ、それとにおいを検知するためのセンサーが内蔵されています。

次にリモコンと介護者に排泄をお知らせするための受信機。最後に、被介護者ごとに排泄検知データが表示されるウェブアプリ(集中管理端末)があり、これらで構成されています。



[深澤]Helppadはシーツの上に敷くんですね。実際に触ってみるととても滑らかですね。

[宇井]シートは、おしり全体を十分にカバーできる幅があり、エアマットレスで使用しても問題はありません。

[深澤]シートの厚さは1センチくらいでしょうか。ポンプ部分もコンパクトなので、寝心地は問題なさそうです。



[宇井]寝心地についていうと、吸引しているときの音は、上布団をかぶせることで軽減させることができます。

[深澤]シートは寝ている間にずれても大丈夫ですか?

[宇井]シートが多少ずれたとしても、穴から空気がちゃんと吸えているのであれば問題ありません。ちなみに、空気はポンプを使ってシート全体から常に吸引し、その先のにおいセンサーへ運ばれます。

そして、吸引された空気内にある尿や便の成分にセンサーが反応したら、受信機へ通知するという仕組みになっています。

[深澤]なるほど。においセンサーは独自に開発されたものですか?

[宇井]センサーは一般的に市販されているもので、空気清浄機やエアコンなどに入っているものです。

[深澤]そのセンサーは、便と尿のにおいの違いまで識別できるのでしょうか?

[宇井]現段階で識別はまだむずかしいですね。仮にビッグデータが集まれば、識別できる可能性があります。

[深澤]それは今後期待できますね。 ちなみに、もしシートが汚れてしまったときに洗濯できますか?

[宇井]はい、シートは洗濯機で丸洗いでき乾燥機も大丈夫ですよ。

[深澤]日常生活の中で繰り返し使うものなので、丸洗いができるというのはけっこう重要なところですよね。ところで、Helppadはどのような方をターゲットとしているのでしょうか?

[宇井]寝たきりで意思疎通が取れない方がターゲットですね。

[深澤]そうなんですね。では次ですが、これが排泄の通知を受けるための受信機ですか?



[宇井]はい、介護士さんたちはこの受信機を携帯します。それで、これらの検知されたデータは、このウェブアプリ(集中管理端末)で見ることができます。



[宇井]このウェブアプリの左側を見てください。被介護者ごとに時系列で通知が表示されます。右側は、その通知記録を元にできあがる排泄パターンを見ることができます。

[深澤]わかりやすいですね。どんな人でも排泄パターンは決まってくるものですか?

[宇井]人によりますね。パターンのわかりやすい人もいれば不規則な人もいます。体調を崩したときや入退院時、季節によって変わることもあります。

しかし、排泄パターンが変わるからこそさまざまなデータが集まり、精度もさらに上がっていきます。使い続けてもらうことに意味がありますからね。

[深澤]たしかにそうですね。それで、「Helppad」の販売についてはどのように計画されていますか?

[宇井]今春から介護施設を中心に販売を予定しています。

[深澤]価格などは決まっていますか?

[宇井]価格はまだしっかりと決めてはいません。レンタルもやる予定ですが、こちらも価格は検討中ですね。

予想外の気づき


[深澤]開発を繰り返してきたなかで、介護職の方から得た予想外の気づきなどはありましたか?

[宇井]これまでの介護施設では、排泄が終わっている状態でオムツを交換するので、利用者さんがどのように排尿や排便をしているのかはわからなかったんですね。

たとえば、少量で複数回にわたって排泄しているのか、それとも一度にするのかなど。

[深澤]うんうん。

[宇井]実験で出入りさせてもらっていた介護施設での話をすると、Helppad導入後にアラームが鳴り、一度オムツ交換をしました。すると、20-30分後に再び呼び出しアラームが鳴りました。

はじめは、「誤報なんじゃないの?」と私たちや介護職の皆さんも半信半疑でしたが、駆けつけてみるとやはり排泄されていました。たまに、排泄している真っ最中に出くわすこともありました。

私たちは、利用者さんは一度で排泄していると思い込んでいましたが、排泄の仕方は人それぞれだったということがそこでわかりました。

[深澤]なるほど。

[宇井]このような排泄の仕方は、時間通りにオムツを交換しているだけでは把握できなかったことで、とても良い気づきでした。排泄センサーによって、利用者さんがどうやって排泄しているかが詳細にわかるようになりました。

[深澤]すごい。“排泄の仕方”なんて考えたこともなかったです。

[宇井]そうですよね。それと職員さんたちからよくあがってきていた意見が、「利用者さんが飲んだ下剤や毎日の飲食の情報を記録していても、何にこの情報を使うのかあまりよくわからないでいた。

だけど、そこに排泄の情報が出てくると、何錠の下剤を飲むと何時間後に排泄が始まるということなどがわかってきた」ということでした。それまでは、オムツを交換した時間はわかるけど、排泄をした時間までは正確にはわからなかったんですね。

[深澤]介護士の方たちも介護記録ソフトになぜその情報を入力しているのかが、いまいちぼんやりしていたんですね。

[宇井]そうなんです。一応情報を入れている、という感じですね。しかし、日々入力している情報もこれからは活用できるということがわかって、「自分たちの記録が役に立つようになると仕事も楽しくなりそう!」とおっしゃっていただけました。

まったく意図していなかったので、その反応にはとても驚きましたね。

[深澤]なるほど。ということは、排泄のコントロールができますよね?

[宇井]おっしゃる通りです。たとえば、夕食後に下剤を飲み、本来は朝方に薬が効いて排泄するものを、早い段階で薬が効いてしまい、夜中のうちに排便しているといったケースの場合、もっと早い時間帯に下剤を飲み、排泄をしてから気持ちよく眠ってもらうなど、データを元に排泄のコントロールを行える可能性が考えられます。

[深澤]それは助かる人が多く出てきそうですね。

[宇井]データ活用というとむずかしいイメージがありますが、「Helppadの経験を元にデータを考えてみるとおもしろそうだな」と現場の方に言ってもらえるのはとてもうれしいことです。

課題と展望


[深澤]Helppadは在宅向けに販売することも考えていますか?

[宇井]そうですね、まずは生活環境がコンパクトに一通り整っている施設での販売を行い、ゆくゆくは多様な生活環境である在宅市場にも普及させていきたいと考えています。

また今後の課題として、「シート型だとベッド上でしか排泄データを取ることはできないので、車いすのクッション程度のサイズにして、椅子や車いすに取り付けられるようにしてほしい」と介護現場から言われていますので、ここにも展開していきたいですね。

[深澤]それはいいですね。

[宇井]他には、半身マヒなどの障がいを抱えている若い方からの要望で、「排泄の感覚がない人にスマホのアプリで排泄したことを本人に知らせてほしい」というのもありました。

外出時の排泄で困っている人たちのためにも、排泄センサーをもっと役に立つものにしていきたいと考えています。

さらに先の将来は、現在のサイズからもっと小型化することでオムツに排泄センサーを貼ることができたり、もしくはオムツ自体に排泄センサーがついているなど、そこまでこのプロダクトを進化させたい気持ちがあります。

年々進むセンサーの小型化に連れて、バッテリーも長持ちするようになってきていますので、ぜひ実現したいですね。

[深澤]用途が広がりますね!

[宇井]においの識別ということに関してもビジョンがあります。ベテランの介護職の方とお話ししていたときのことです。その方から、「利用者さんがノロウイルスにかかっているか便の匂いで判断できる」と聞きました。

その方が出勤しているときに、ノロウイルスにかかっていると思われる利用者さんの便のにおいを鼻で感じとることがあると、「医者が往診にくる前にとりあえず隔離だけしよう」と、あらかじめ手を打って施設内感染を防ぐことができるらしいのです。

[深澤]たまに鼻が利く人っていますが、それはまたすごい話ですね。

[宇井]しかしその方は、「ノロウイルスのにおいが、どんなにおいなのかを他人に教えることができない」と言うと、続けて、「私でもにおいの違いがわかるのだから、機械だったらできるんじゃない」と私たちに課題を与えてくれました。

現時点の私たちのセンサーでは排泄の有無しかわかりませんが、今後、研究と開発を繰り返し、センサーが進化していけば、尿と便の識別や排泄物の量、そして排泄物のにおいの情報から、「この人は今どんな疾病状態にあるのか」ということまでわかるかもしれないと今は期待しています。

[深澤]おおお。

[宇井]私も小さな子供をもつ母親ですが、その子がおなかを下したときの便のにおいは、たしかかにいつもと違うなと感じています。逆に毎日私たち親と同じ食べ物を食べる中で、排便のにおいが似ているなと思うことも。

さらに、知人の介護士の方からは、便のにおいからどの利用者さんのものか判断できると聞きました。それについては、私も介護施設で働かせてもらっているときに、トイレの後のにおいで誰が入っていたかがわかりました。

[深澤]私も知人の介護士の方からそのような話を聞いたことがありますね。

[宇井]排泄のにおいから、ウイルスなどを検出できるかはまだわかりませんが、少なくとも人間はできるんだなと思っています。ですので、これらに関しては、医学系分野の方々とともに共同研究開発を始めております。

[深澤]すでに動いているのですね。それにしても、においの可能性ってすごいんですね!

[宇井]そうなんです! においはとても可能性があっておもしろい分野なのですが、においの研究は、体臭や口臭、環境臭などが多く、においから何がわかるかという研究はあまりされていないようです。

ましてや、排泄物のにおいからというのは、そこまで研究が進んでいないように思われます。

[深澤]こちらの研究も進んでいくといいですね。

[宇井]当たり前のことかもしれませんが、排泄物ってほぼ毎日出すのに、ただ捨てています。でも、そこから採れる情報というのは実はたくさんあるんです。

採取するものは排泄物のにおいなので、血圧や唾液と違って簡単に取ることができ、さらに、生体を傷つけない非侵襲で非接触です。そのような点が「におい」を研究していく上でとても良いところだなと思っています。

[深澤]においって研究していく上でとても便利なんですね。他にはどのようなことを進めていきますか?

介護における「脳」をつくる


[宇井]これらと同時に、Helppadについてはサービス作りも大切にしていきたいです。

それは、この製品に関してユーザーからの声をウェブ上で集め、「ソーシャルマニュアル」として、みんなでHelppadの使い方を作り上げていきたいと考えています。

というのも、今までの介護機器や介護ロボットの多くは「作って終わり」のようなイメージがあります。

「こういうときにはこうやって使うんだよ」とか「こういうふうにも使えたよ」などとユーザーと一緒に作っていくことがとても重要だと感じています。



[深澤]「ユーザーと一緒に」ってところがいいですね。

[宇井]さらに、とても長期的な展望として、この排泄センサーを基軸にして、いろんな情報とつなげ拡張できるようになっていくと、最終的には介護における「脳」のような大きなシステムができるのではないかと考えています。

[深澤]と言いますと?

[宇井]ご存じだと思うのですが、3年以内に離職する介護職員が全離職者の7割を超えていたり、5分に1人、自らの仕事をやめて介護に参加することになる介護離職が介護業界の課題としてあります。

これを見て私が思うのが、介護未経験者が介護を支えているということです。

[深澤]うんうん。

[宇井]もちろん介護をしているうちに、技術や知識は身についていくと思いますが、介護に参加する方の多くが、技術や知識を事前に習得せずに、あるいは、習得できずに介護をしている、ということですよね。

介護の現場に立たれている方々やご家族など多くのみなさんは、とても純粋な気持ちで一生懸命に介護をされています。私は彼らの思いが無意味にならないようにしたいんです。

ですがその一方で、本来、専門性を持って介護に参加するべきだとも思っています。現状は多くの介護未経験者が介護を行っていますが、認知症などで介護がとても困難なケースは、プロの介護職の方々でなくてはできません。

[深澤]その通りですね。

[宇井]そうするためには全体のレベルをもう少し上げる必要がある。どういうことかというと、介護のことが何もわからない人のために、いきなり介護をやることになったとしても、一定水準の介護を行えるようにするためのツールが必要だということです。

それが実現できると、介護の世界で働いている高い専門性をもった方々は、介護が困難なケースに対して24時間365日だけしかない時間を有意義に使っていただくことができます。

プロはプロの仕事を、未経験者でも一定水準の介護を行えるようにするためには、介護の専門職と未経験者との間にあるギャップをテクノロジーで埋めていくことが必要です。

[深澤]介護が困難なケースって多いです。そこにはやはりプロの力が必要です。

[宇井]つまり、私たちのシステムを使うと、誰がいつ介護に参加することになっても、一定水準のレベルで介護をすることができる。そのような世界がつくれるといいなと思っています。

しかし国の打ち出すこれまでの政策ですと、介護福祉士や介護職員初任者研修の資格をみんなに取得させようとしたり、あるいは、ボランティアで乗り切ろうみたいな感じになってしまっています。

もちろんがそれらにも意味があると思っていますが、それだけではきっと間に合わない。それに、一人ひとりのレベルを上げるってとてもむずかしいことだと思います。

ですから、みんなが介護に参加できるための「介護脳創り」を進めることが現実的だと思っています。

[深澤]「介護脳」ができると多くの人が救われますね。一刻も早く実現してほしい世界です! それでは最後に一言ありますか?

[宇井]そうですね、今、一緒に働いてくれる技術者を募集しています(笑)

[深澤]良い締めくくりだと思います(笑)。興味ある方はぜひお問い合わせください! 本日はありがとうございました。


お問い合わせ
株式会社aba ウェブサイト: http://aba-lab.com/